2021年03月01日

[通信]
5Gで変わっていく社会

今までは、5Gと聞くとスマートフォンでの電話やアプリケーションなど、人が使う通信サービスが中心でした。近年、IoTと呼ばれる、車や機械などに通信機能をつけて社会全体の効率化を図ったり、至便性を高めたりする使い方が増えてきます。IoTをさらに発展させていくための基盤となることを5Gは期待されています。

移動通信技術の進化

初期の2Gパケット方式は通信速度が最大10kbps程度でしたが、2000年代の3Gになると数百kbpsになり、さらに2010年代のLTEを利用する4Gで10Mbpと飛躍的に速度が向上しました。LTEの進化版であるLTE-Advancedでは1Gbpsを超える通信速度が実現されていますが、5Gではさらに10Gbpsを超える最大通信速度を実現します。

増加する通信トラフィック

ネットワーク上での通信データの流れをトラフィックといいます。動画アプリやSNSでの動画や静止画の利用の増加、端末ディスプレイの高解像度化などによりトラフィックは増加しています。増加傾向は今後も続き、通信容量の継続的な拡大が必要となります。移動通信トラフィック全体でみると、2019年から2025年の間に4倍近く増加すると予測されいます。トラフィックの増加はネットワーク負荷の増え、無線機地局の増設など通信容量を拡大と同時に効率よく送受信処理する必要に迫られます。これは5Gの導入を促進する1つの大きな動機となり、トラフィック能力を飛躍的に拡大することが出来ます。

ユーザーの期待

コンシューマーが5Gのどのような点に期待するかを調査したところ、通信の高速性によりAR、VRや4Kなどのアプリケーションや動画像アプリがどこでも使える、無制限で安価なデータ通信が利用できるといった点が大きくなっています。また、ネットワークの高い信頼性やセキュリティ向上への期待も大きくなっています。5Gが普及すれば通信速度の問題が解決されるため、5G対応のモバイルWi-Fiの人気が高まる可能性があります。光回線の通信速度に匹敵する速さで、電波状態が良ければ、それを上回る速度がでることもあります。また、モバイルWi-Fiは複数の機器を同時接続にも対応しているため、もう固定回線は必要なくなるかもしれません。

スマートシティ

5Gにより、自治体、企業、コミュニティ、そして市民が相互に緊密につながり、都市が直面する多くの課題に取り組むことにより持続可能で豊かな社会が実現されることが期待されています。

次世代モビリティサービス

スマートフォンのアプリなどで、出発地と目的地、希望時刻などを入力すると、さまざまな移動手段を組み合わせて移動をサポートしてくれるサービス。複数の経路から自分の好みのものを選択することも可能で、決済も全行程一括で行うことが想定されています。公共交通機関、レンタカー、シェア自転車、徒歩などあらゆるものが含まれる可能性があり、これらをIT技術を用いて統合することが前提となります。ユーザーは個々に予約や支払いをする必要がないので、効率的に移動できるようになります。

新たな映像系サービス

5Gでは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)などの映像系サービスが大きく伸びることが期待されています。

ウェアラブルデバイスと5G

スポーツ選手の腕につけたデバイスからの心拍などの情報を低遅延の5Gを利用して観客に送ることにより、選手と一体感を感じられものや、視覚障害者の盲導犬の役割を5Gを利用して人が遠隔で果たすというものもあります。

スポーツ観戦の新しい楽しみ方

競技場に多数のカメラを配置し、多方面から撮影した映像を合成して、リアルタイムで自由な角度から見えるようになります。タブレットやスマートフォン動かし自由なアングルで見れるので、新たな形態のスポーツ観戦を楽しめます。スポーツ観戦だけではなく、演劇やコンサートでさまざまな視点で役者の動作を見たり、演奏者の様子を見るといったことが実現できます。

産業界で5Gの利用

これまでの工場やプラントなどでは、通信機能が必要な装置やセンサーは有線でつながれていました。しかし、施設内を移動する製造ロボットや、部品などを搬送する自動走行車を有線で接続することは困難です。また、膨大な数のセンサーを有線接続すると複雑な配線が必要になります。これを無線にすればこれらの問題を解決できると同時に、監視系デバイスなどがより経済的に、手軽に設置でき、また装置構成の変更や拡張に対して柔軟に対応できます。

製造用ロボットなどの制御

自動車などの組み立て工場には通常千台単位の製造用ロボットがあり、複数のロボットが相互に連携して共同作業を行うことが一般的です。従来は、ロボット制御プログラムは各ロボットに組み込まれていましたが、それを工場内のサーバーに集中して配置し、複数のロボット制御を1か所から行えば連携が円滑に行えます。また、随時プログラム変更を行うなど大きな柔軟性を実現できます。

建築・土木業、鉱業のスマート化

建設現場の上空をドローンで撮影、映像で整地状況を測量しながら、リアルタイムで自動運転ブルドーザーを調整して施工設計図に合うように遠隔操作することが考えられます。鉱山でも油圧ショベルやブルドーザーなどの建設・鉱山機械を自動運転や遠隔操作することが可能になります。

どこでも受けられる高度な医療サービス

TV電話による診察、患部や内視鏡の映像を4Kや8Kの高精細でリアルタイムに送信することにより、的確な診療が可能となります。診療所から高精細カメラで患者の映像や患部の映像を専門医のいる病院にリアルタイムで伝送して、専門医の診療を行ったり、診療所の医師にアドバイスを送ったりといったトライアルも進められています。

農業、漁業における生産性向上

自動運転を行う農機を遠隔制御を行う場面で、5Gは重要な役割を果します。固定カメラやドローンについたカメラの映像で農作物の生育状況を遠隔でモニターする場合にも利用ができます。同様に、ニワトリや家畜などをモニターカメラの映像で監視することも可能です。漁船に設置された計測機器で漁獲情報や海水温、気象情報などを5Gを用いて漁協へ送信して、クラウドに蓄積できます。漁協はこの情報を分析して、漁獲量が高いと予想されるエリア情報を提供可能になります。また、年間を通して蓄積された大量データの分析に基づき、海の状況に応じた最適な漁場を見つけ出し、自動操縦で漁船を向かわせるシステムの開発も可能と考えられます。

暮らしの安全、安心を支援する5G

警備員が装備したカメラや、カメラ付きのドローンからの4Kなど高精細映像を5Gを経由して集約し、AIを利用した画像分析によって、不審な行動をリアルタイムで自動検出するシステムが検討されています 。5G通信機能を備えた情報収集車を走らせ、道路状況やゴミ収集状況などの重要生活拠点の高精細映像をリアルタイムで中継するというアイデアもあります。

除雪車の安全走行

除雪車の運転席に5G通信機能付きディスプレイを設置し、市町村が持つデータベースに蓄積された積雪のない状況をリアルタイムに表示します。雪の下に埋もれているマンホールや縁石などに注意しながら、除雪作業が行えるように支援します。

船や飛行機に関わる作業の効率化

港では船舶に積載されたコンテナの積み卸し作業を、「ガントリー」と呼ばれる巨大なクレーンを用いて行います。クレーンに30台以上のHDカメラを付け、船やコンテナ、運搬車両などのさまざま角度の映像を地上の操作室に送り、運転士はこれらを見ながらクレーンを遠隔操作するというものです。クレーンの遠隔操作に加えて、荷物を運ぶ自動走行車の運行など、港湾作業が効率化できると期待されます。

飛行データのダウンロード

空港では乗客や荷物の運搬、警備や監視系、飛行データなどに関連してさまざまな通信のニーズがあります。特に飛行データは、着陸する際に航空会社の運航センターに無線でダウンロードできれば、異常や問題がないかを即座に分析し、次のフライトに備えたり、保守作業に役立てたりすることができます。

まとめ

移動通信は5Gがゴールではなく、産業界での本格的な利用という意味では出発点にすぎません。利用の仕方もどんどん広がっていくと考えられます。5Gを実際に使ってどんな問題があるのか、今後ますます進化していくであろう移動通信に期待していきましょう。

この記事を書いた人

kayama

取締役、アートディレクター

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